現役銀行員が解説します。<2019年12月版>
住宅ローン審査マニュアルトップページ >>> 住宅ローン担保評価の基本「正常価格・担保価格」
不動産の価格としては、基本の正常価格のほかにも限定価格、特定価格、特殊価格を求めることもあります。
担保評価の方法に入る前に、求めるべき正常価格とは何か、担保価格とは何かを考えてみましょう。
担保価格とは、物件の正常価格を求め、これに担保としての掛目を乗じて求められるものです。
正常価格とは、自由市場において通常の売手・買手の間で成立する合理的な価格のことで、特別な事情、動機、制約を除いたものです。担保に係る評価の場合も、これを求めます。
評価にあたっては、いきなり担保価格を出すのではなく、まずこの正常価格を後述する
1.原価法
2.取引事例比較法
3.収益還元法
の3方式により求めるのが、本来の手順です。
これに対し、限定価格という概念があります。この種の価格は、鑑定評価の依頼目的によって必要になることもあり、また往々にして数多い取引事例のなかに混入していたりするために、取扱いには注意が必要ですので、その性質を一通り理解しておきましょう。
限定価格とは、ある不動産に他を併合したり、一部を分割して他に譲渡したりする場合に、その取引価格が正常価格と異なっても、それなりに経済的合理性のある価格のことです。たとえば、「併合」を例にとれば、A地所有者がB地を購入する価格は、正常価格でなくとも経済的合理性のある価格が成立する場合もあります。
まず、A地とB地の正常価格を次のとおりと仮定します。
・Aの正常価格=1平方メートル当り800千円×100平方メートル=80,000千円
・Bの正常価格=1平方メートル当り1,000千円×50平方メートル=50,000千円
この場合、A地所有者がB地を買収し併合すると、併合後の全土地(C地とする)の価格は、B地と同じようにすべてが道路に接面することにより、次のようになります。
・Cの正常価格=1平方メートル当り1,000千円×150平方メートル=150,000千円
そこで、A地所有者としては、併合したのちにこれを一体利用して、道路に広く接面することにより価値が上がるのであれば、正常価格に多少上乗せしてもB地を買おうとするでしょう。その上乗せ限度額は、次のようになります。
・C:150,000千円 − (A:80,000千円+B:50,000千円) = 20,000千円
この20,000千円の全部または一部を上乗せしても(つまり、B地の購入価格が70,000千円までなら)、その購入には経済的合理性があります。
そのようにして成立した価格は、当事者間のみに成立する、市場を限定された価格ですから、限定価格といわれ、正常価格と峻別されています。
このような市場限定の価格は、借地人による底地買上げ等のケースにもみられ、また、併合ばかりでなく、分割や売却のケースにもみられます。
いわゆる地上げ屋は、道路に面したB地が買収できそうだと、A地のような裏側の土地を次々と買収し、これらをまとめて第三者に高く売るわけです。
この際には、かなり高い価格を提示してA地所有者らを説得して回ることになります。正常価格を上回る高い価格で買っても採算が合うのは、土地をまとめればもっと高い価格で売れるからです。
取引事例を集めるときに注意しなければいけないのは、たまたま高い取引価格を収集した場合、それがこれら周辺一帯の地上げに伴う限定価格の性格をもつものではないかということです。そのような特殊な価格を正常価格と思い込んで比較してはならないのはいうまでもありません。
この意味においても、周辺の土地の動きをよく分析する必要があるわけです。
なお特定価格とは、DCF法により投資家に示す投資採算価値を表したり、民事再生法に基づき早期処理を要する場合や、事業継続を前提にする場合にも求められます。また、特殊価格とは、文化財等につき保存を前提にした価格です。
(次回に続く)
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